近年、お口の中のがんである口腔がんが増加傾向にあります。
最近では、2019年にタレントの堀ちえみさんがステージ4の舌癌であることを公表し、舌癌に対する関心が高まりました。
そんな舌癌ですが、実は歯並びの悪さが原因になる可能性があることをご存知でしょうか。
今回は、歯並びと舌癌の関係性について解説します。ぜひ最後までご覧ください。
目次
舌癌とは
舌癌(ぜつがん)とは、舌にできるがんで、口腔がんの一種です。
舌癌を含む口腔がんの患者数は増加しており、舌癌は口腔がん全体の約60%を占めています。
口腔がんの発生率は全がんの中で約1〜3%と比較的低いですが、年間で約6,000人がこの病気に罹患し、約3,000人が命を落としています。
舌癌は進行が早い特徴を持ちますが、早期発見できれば完治できるがんです。発見が遅れないためにも、症状や原因をしっかり理解することが重要となります。
舌癌の症状
舌癌の初期症状として、舌のしこりやただれが挙げられます。舌に白や赤の斑点が現れることや、痛みやしびれを伴うこともあります。舌癌は舌の側面にできることが多く、見えにくい場所であることと初期には自覚症状が少ないため、発見が遅れがちです。進行すると、硬結や潰瘍が生じ、痛みや出血が起こることもあります。
舌癌の症状は口内炎と似ているため、舌癌だと気付かずに進行するまで放置してしまう人が多いのです。前述したように早期発見・早期治療が重要な病気なので、「2週間以上口内炎が治らない」などの異変を感じた際はすぐに歯科医師に相談しましょう。
舌癌の原因
舌癌の原因は、まだはっきりと明らかになっていません。しかし、以下のようなことが舌癌のリスクを高めるとされています。
飲酒や喫煙
飲酒や喫煙が舌癌と直接関連しているかは明確には証明されていませんが、非喫煙者に比べて喫煙者の舌癌リスクは約3倍であるというデータがあります。
飲酒や喫煙が舌癌のリスクを増加させる理由の1つは、アルコールやタバコに含まれる化学物質が舌に慢性的な刺激を与えている可能性があるという点です。また、舌癌患者には男性が多いという傾向があり、この性別差は男性の方が飲酒や喫煙の習慣が多いことと関連しているのではないかという仮説も存在します。
歯並びによる舌への慢性的な刺激
もう1つの原因として考えられているのが、舌への慢性的な刺激です。
舌は外部の刺激に対して非常に敏感で、長期間の刺激が舌癌の発症につながるケースが実際にあります。歯並びが悪いと、知らず知らずのうちに舌の同じ場所が慢性的に圧迫されています。この種の機械的な刺激が長期にわたって続くと、舌癌を引き起こす一因になる可能性があるのです。
同様の理由で「虫歯」や「合っていない入れ歯」も舌への刺激となり、舌癌のリスクを高めるとされています。
入れ歯や補綴装置の舌への物理的な慢性刺激
入れ歯が尖っていたり、ザラザラしている面が長期的に舌に接触し、慢性的な刺激を与える場合も、舌癌の発症につながることがあります。
舌癌になる危険性のある歯並び
以下の歯並びは、舌癌になる危険性を高めるとされています。
歯の形がV字
本来、歯並びはU字型の滑らかなカーブが理想的です。この状態では舌が歯列の中に収まり、唇や頬は歯から適切な距離を保っています。しかし、V字型の歯並びになるとアーチが狭まるため、歯が舌に当たりやすくなり慢性的な刺激につながりやすくなります。
奥歯が内側に傾いている、内側から生えている
通常、歯は垂直に生えていますが、これが内側に傾いていたり、内側から生えている場合、歯と舌との間で慢性的な摩擦を引き起こすため、舌癌になるリスクが高まる可能性があります。
噛み合わせが悪い
正常な噛み合わせは、上顎の歯が下顎の歯よりも2〜3ミリ外側に位置しています。これは前歯だけでなく、奥歯も同様です。この噛み合わせがずれている場合、頬や舌を噛みやすくなり、結果として慢性的な刺激となる可能性があります。
舌に歯の圧痕がついている
舌に歯型の痕がついている場合、舌と歯が強く接触している可能性が高いです。
まとめ:舌癌を防ぐために
歯並びが悪い人は、舌癌のリスクを少しでも減らすために歯列矯正がおすすめです。歯列矯正は見た目を整えるという目的に目がいきがちですが、このような口内のトラブルを改善するために奥歯の矯正が必要なケースも多くあります。
実際に、当院でも舌癌予防で矯正をされる方が大変増えてきています。下の写真は内側に生えている歯を抜かずに削らずに矯正治療した症例です。奥歯が内側に傾斜していた歯がまっすぐ起き上がっていることがおわかりになるかと思います。舌を置くスペースも広くなり、慢性的な刺激がなくなり動かしやすくなりました。
今回ご紹介した舌癌リスクの高い歯並びに当てはまる方や、同じ場所に口内炎ができやすい、歯型の痕が舌についていて心配という方は、なるべく早いうちに歯科医院に相談してみてください。