インビザラインは目立たず、取り外しが可能な矯正装置として人気があります。噛み合わせの改善にも効果がありますが、治療中に噛み合わせが悪くなることもあります。この記事では、インビザラインで噛み合わせが悪くなる原因と対処法について解説します。
目次
インビザラインで噛み合わせが悪くなることはある?
インビザラインは、噛み合わせの改善にも効果的な歯科矯正治療です。歯並びを整えることで、自然と噛み合わせも改善されていきます。一般的に、インビザラインによって噛み合わせが悪化することはありませんが、治療中に一時的な違和感を覚える方もいるようです。
矯正治療では、歯を正しい位置に移動させることで、理想的な噛み合わせを目指します。特に治療開始直後は、歯の移動が大きいため、今までとは異なる部分で歯が接触することがあります。これにより、噛み合わせが悪くなったように感じる方もいるかもしれません。しかし、これは治療の過程で起こり得る一時的な現象であり、治療が進むにつれて改善されていきます。
正しい噛み合わせとは
正しい噛み合わせとは以下のような条件を満たしている状態を指します。
- 上下左右が対称である
- 上の歯が下の歯を約1〜2mmほど覆っている
- 上の前歯が下の前歯より1〜2mm前に出ている
- 左右の奥歯が均等に噛み合っている
- 顎の関節の機能と噛み合わせが調和している
- 前歯が強く当たりすぎていない
この条件に満たないと悪い歯並びということになりますが、噛み合わせには個人差があるため、これらの評価は歯科医師が口腔内を直接確認して判断するのが一般的です。
噛み合わせが悪い状態を放置すると、食物の咀嚼が上手くできない、発音が上手くできない、顎関節に過度の負担がかかり顎関節症を誘発する、虫歯や歯周病のリスクが高まる、成長期であれば顎の形が変形してしまうなど、さまざまな問題が生じる可能性があります。
そのため、インビザラインをはじめとする歯列矯正治療は、悪い噛み合わせを改善するための効果的な方法の一つと考えられています。
インビザラインで噛み合わせが悪くなる原因
インビザラインで噛み合わせが悪くなることはインビザラインに精通した歯科医師が治療をすれば基本的にありません。
しかし、以下のようなことが原因で、噛み合わせが悪くなる可能性があります。
矯正期間中の一過性のもの
インビザライン治療の過程では、歯が理想的な位置に移動する途中で一時的に噛み合わせが悪く感じることがありますが、これは治療の正常な過程であり、心配する必要はありません。特に、内側に入っている歯が外側に出ていく治療過程では特に噛み合わせが悪くなることがあります。
また、マウスピースを装着している間は上下の歯が直接接触しないため、マウスピースを外した直後に一時的な違和感を覚えることもあります。
一般的に、治療中の噛み合わせの違和感は問題ありませんが、まれに治療終了後も違和感が続く場合があります。そのような場合は、歯科医師が噛み合わせの調整のために再度歯列のスキャンを行い、分析し、違和感を解消し快適な噛み合わせを実現できるよう細かい調整をしていきます。
マウスピースが正しく装着できていない
マウスピースが浮いていたりズレていたりして正しく装着されていないと、歯の移動が適切に行われず、噛み合わせに影響を与える可能性があります。マウスピースが歯にぴったりとフィットしていないと、歯が意図した方向に移動できません。意図しない動きになると、咬合干渉という状態が起き、咀嚼リズムが崩れ、違和感を感じやすくなります。
歯ぎしりや食いしばりの癖がある
歯ぎしりや食いしばりの癖がある人は、マウスピースを装着していても、無意識のうちに力が加わり、歯の移動に影響を与える可能性があります。これにより、意図しない歯の移動が起きてしまい、噛み合わせが悪くなる恐れがあります。
また、歯ぎしりや食いしばりが強すぎる場合には、マウスピースがすり減ってしまい、計画通りに歯が移動しないこともあります。その場合には、ワイヤーに切り替えるなど対処法も必要になってきます。ですから、マウスピース矯正のみを扱うのではなく、ワイヤー矯正もしっかりと行える必要があります。
マウスピースの装着時間が足りない
インビザラインの推奨装着時間は、1日20時間以上です。装着時間が足りないと、歯の移動が遅れ、噛み合わせの改善が滞る恐れがあります。
マウスピースの装着時間を守れない方も一定数います。その場合には、ワイヤーへ移行し、強制的に歯を動かしていくのも手段となります。「痛いから外してしまった。」「装着していると気持ち悪くなる。」「マウスピースを自分で管理する自信がない。」そんな方はワイヤー矯正で治療するのも良いと思います。
変形したマウスピースを使用している
変形または破損したマウスピースをそのまま使っていると、歯に加わる力の方向や強さが変わります。そのため、意図した通りに歯が移動せず、噛み合わせが悪化する恐れがあります。
歯科医師の経験不足、技術不足
インビザラインの最終的な治療計画は、歯科医師が立案します。経験の浅い歯科医師が治療計画を立てると、噛み合わせがしっかりと考慮されない場合があります。不適切な治療計画では、歯の移動が効果的に行われず、噛み合わせの改善が難しくなる恐れがあるのです。
しかしながら、矯正の再治療はとてつもなく難しいものです。一度動かした歯列は二度と前の状態に戻ることはありません。インビザラインのみでリカバリーが効かないケースが多々あります。やはり、ワイヤー矯正とインビザライン矯正ともに扱える先生に診てもらうことが望ましいです。
当院では、リカバリー矯正も多数行っております。「噛み合わせに違和感があるまま治療が終わってしまった。」「抜歯したスペースが埋まらない。」「歯が斜めになったまま放置されている。」「何年も矯正しているのに一向に終わらない。」「2-3年矯正しているのに歯を抜かないとこれ以上前歯が下がらないと言われた。」「見た目は良いけど、うまく噛めない。」「矯正が終わったけど、上下の前歯が空いたままで前歯で物が食べられない。」このような方が毎月のように来院されます。当てはまる方は一度ご相談にいらしてください。
インビザラインで噛み合わせに違和感がある時の対処法
インビザラインで噛み合わせに違和感がある場合、以下のような対処法があります。
歯科医師に相談する
噛み合わせに違和感がある場合は、まず歯科医師に相談しましょう。歯科医師が治療計画を見直し、必要に応じて調整を行います。我慢せずに、早めに相談することが大切です。歯科医師は、患者さんの不安や疑問に丁寧に対応し、適切なアドバイスを提供します。
マウスピースを正しく装着する
インビザラインのマウスピースを正しく装着するには、チューイーと呼ばれるゴムを使用し、マウスピースを歯にしっかりと密着させることが大切です。まず、指を使ってマウスピースを前歯から奥歯に向かってはめ込みます。
次に、チューイーを前歯から奥歯に向かって均等に噛むことで、マウスピースを歯に密着させます。特に、インビザライン治療を開始した際や、新しいマウスピースに交換した直後は、マウスピースが浮きやすい傾向があるため、通常よりも長めにチューイーを噛むことが推奨されています。
稀にいらっしゃるのが、マウスピースが内面に入り込んでしまって、その部分だけ内側に折れ曲がって装着されている方がいます。折れ曲がった部分だけマウスピースが2重になってしまっています。マウスピースが折れ曲がっていないか、装着時に確認しましょう。折れ曲がっている場合には、ピンセットなどで真っ直ぐ伸ばしてから装着する必要があります。
マウスピースの装着時間を守る
インビザラインは、1日20時間以上の装着が推奨されています。装着時間を守ることで、歯の移動が適切に行われ、噛み合わせの改善につながります。食事や歯磨きの時間以外は、できるだけマウスピースを装着するよう心がけましょう。
装着時間が守れなかった場合には、必ず2-3日マウスピースの装着時間を伸ばし、適切にフィッティングしている状態で次のマウスピースへ進みましょう。
破損や変形があれば使用をやめる
マウスピースに破損や変形がある場合は、使用を中止し、歯科医師に相談しましょう。変形したマウスピースを使用し続けると、治療計画に悪影響を与える可能性があります。マウスピースは大切に扱い、定期的にチェックすることが重要です。
まとめ
インビザラインは噛み合わせの改善に効果的な矯正装置ですが、治療中に一時的に噛み合わせが悪くなったと感じることがあります。ほとんどの場合、その違和感は治療中の一過性のものです。しかし、マウスピースの使用方法を守らないと、噛み合わせに悪影響を及ぼす可能性があります。インビザライン矯正のルールを守っていれば噛み合わせが悪くなることは基本的にありません。
何か不安なことがあればすぐに歯科医師に相談しましょう。患者さん自身もマウスピースの正しい装着方法や装着時間を守り、定期的なチェックを怠らないことが大切です。